筋トレの基本と超回復・オーバートレーニング

筋トレの基本と超回復・オーバートレーニング

筋力はなぜ強くなるか

筋トレを適切に行っていくと筋肉は肥大し、徐々に筋力もアップしていきます。
トレーニングで筋肉が伸び縮みを繰り返すと筋繊維は傷つき、トレーニング終了後は一定期間パフォーマンスも低下します。しかし、この損傷した筋繊維は十分な休養、栄養を得て回復するとトレーニング前の状態よりも太くなるため、より強い筋力を発揮することができるようになります。これが筋力向上の機序で「超回復」と言われています。
ここで注意が必要なのは、充分な休養、栄養補給が行われないと回復が十分に得られず(回復速度が遅くなる)、一定の回復が得られる前(ベースラインを下回った状態)にトレーニングをしてしまうと断続的にパフォーマンが低下していくというオーバートレーニングの状態になってしまう場合があります。

トレーニング後のパフォーマンス低下は負荷量や頻度などの運動条件によって変わり、軽い負荷であればほとんどない場合もありますし、強い負荷であれば数日間筋肉痛や張りが残ることにもなります。その後の回復は個人の身体の状態によって大きく変わってきますので、運動習慣がない方がトレーニングを始める場合には目標とする運動強度より低めの強度から始めて徐々に強度を高めていく事をお勧めします。

筋トレの方法

課題や目標を明確にする

筋トレを行う方は、基本的には筋力をつけたい、筋肉をつけたい(筋肉量を増やしたい)ということで始める方が多いと思いますが、中には身体に不調があってそれを改善したいという思いから始める方もいらっしゃるかと思います。例えば、椅子から立ち上がるのが大変になった、坂道を歩いているとすぐに腿の前が痛くなってくるといった運動能力の低下を改善したい場合等です。椅子から立ち上がるのが大変になったといえば下半身の筋収縮力の向上が目標になりますし、坂道を歩いてすぐに腿の前が痛くなるようであれば下肢筋の筋持久力の改善が目的になってきます。

「筋力」も細かく分類すると ① 筋収縮力 ② 筋持久力 ③ 収縮速度 の3つに分けることができます。一般的なイメージの「筋力」というと、筋収縮力のことになりますが、筋収縮力を向上させたい場合と筋持久力を向上させたい場合では最適な負荷も変わってきますので、ご自身の身体の状況等から目標を明確にさせておくことで効果的なトレーニングを行うことができます。

筋トレの方法

では、筋トレを始めるに当たって何から始めたらよいのか?
まずは、具体的なプログラムをFITTの原則に沿って決めていきます。
ここでは、前述の「椅子から立ち上がるのが大変になった」「坂道を歩いているとすぐに腿の前が痛くなってくる」の訴えがある場合を例に筋トレの方法を決めていきます。

種類・強度・時間・頻度(FITTの原則)を決める

種類:椅子からの立ち上がりが大変に感じるようになってきた。また、腿の前が痛くなるということで、立ち上がりの動作と同じ動きで太腿の前(大腿四頭筋)を使うレッグプレスでのトレーニングを選択します(他にもマシンではレッグエクステンション、自重トレーニングではスクワットやフロントランジ等も適した運動になります)

レッグプレス

強度:筋力トレーニングでの最適な負荷を求めるに当たり、まず最初に現状での筋力を調べる必要があります。
ここで用いるのが「RM」という指標になります。「RM」はレペティション・マキシマム(repetition maximum)の略で、最大反復回数という意味です。
一定の運動速度(このサイトでは重りを上げるのに4秒、下すのに4秒のスロートレーニングをお勧めしています)で10回続けて運動できる最大の重さを10RM、最大限の力を出しても1回しか上げ下げできない重さを1RMとします。
実際には1RMを測定するのは身体への負担が非常に大きい(血圧が急激に上昇したり、筋、腱、関節に強い力がかかる)ため、10RMを求めます。
下表に照らすと、10RMは1RMの75~80%の重さに当たり、その効果として「筋肥大」「筋収縮力」が挙げられています。今回は「筋収縮力」と「筋持久力」の改善が目標になりますので10RMよりも5%~10%程度軽い重りで12~15回を目標にトレーニングするのが効果的であるということになります。

負荷率最大反復回数(RM)効果
100%1RM1集中力
90%1RM3~4筋肥大
80%1RM8~10筋肥大・筋収縮力
75%1RM10~12
70%1RM12~15筋肥大・筋収縮力・筋持久力
60%1RM18~20筋持久力
50%1RM20~25
40%1RM30回以上
RMと負荷率、効果

※10RMを求める場合、腕の運動であれば5Kg~10Kg程度、脚の運動であれば30Kg~50Kgの重りから始めてみてください(個人差がありますので自信のない方はもっと少ない重りから始めてください)

今回はレッグプレスということで50Kgに重りをセットして、伸ばす(4秒)曲げる(4秒)を10回繰り返します。10回程度なら余力を持ってできると判断できれば10回の途中でも終了し、重りの重量を増やして再度10回行ってみます(10回の運動を繰り返していくため、最後には筋疲労で正確な判定ができなくなるため)
結果として、「何とか10回繰り返すことができる最大の重量」を知ることができます。これが10RMということになります。

目標に合わせて負荷量を設定する

今回のトレーニングの目標は筋収縮力、筋持久力の改善を図るということですから、上の表から、筋収縮力と筋持久力の両方に効果がある12~15RMが適切な負荷になります。
今回は、トレーニング初心者であることや筋持久力への効果をより高めることを考慮し、仮に10RMが70Kgだったとして、70Kgから1枚だけ軽い重り60~65Kgを選択(75%1RM~70%1RM)して12~15回を目標に運動を行い、これを1セットとします。この運動は1セット終了後、1分から2分のインターバルを開けてもう1セット行うと更に効果が高まります。
また、このくらいの強度の運動を行うと、ほぼ筋肉痛になります。筋肉痛があるとパフォーマンスは低下しますので、毎日トレーニングを行うのであれば同じメニューを繰り返すよりは運動プログラムを3パターンくらい用意しておいて、鍛える部位を変えていく方が良いかと思います(オーバートレーニングを避けるため)
筋肉痛が強く残ると日々の生活にも支障が出てきます。筋肉痛を残さないためにも運動終了時の整理体操も意識して行っていただきたいと思います。

頻度・持続時間:15回(目標)を1セットとして2セット。伸展:4秒+屈曲:4秒のスロートレーニングで実施。

今回は、10RMの負荷だと筋持久力への効果が少ないため、10RMより1段階負荷を軽くして回数を多くすることで筋持久力への効果が増すようにしています。
筋持久力に関してはバイク(自転車)で行うこととして、レッグプレスでは筋収縮力を改善するのみという場合には10RMの重りで10回を目標に行うという方法も考えられます。

負荷の増やすタイミング

65Kgの負荷で、4秒・4秒のスロートレーニング、12~15回を目標に運動を実施すると
最初、15回できるか、できないか、ぎりぎりの状態が、15回行っても余力を感じるようになります。
特に、ほとんど運動をしてこなかった方は比較的短期間で余力を感じるかと思います。
1回ないし2回、余計にできるようになったら重りを1つ重くしてみます。

このサイトでは、筋トレを行う時に「スロートレーニング」という方法でのトレーニングをお勧めしています。
具体的な方法としては「重りを上げる」「重りを下す」運動をそれぞれ4秒(1動作計8秒)かけて行うようにマシンを動かします。
比較的軽い運動負荷であってもゆっくり動かすことで強い負荷をかけた時と同様の効果が期待でき、運動に伴うリスクは少なくなるとされています。
詳細は「スロートレーニング」の記事をご参照ください。

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